何者にもなれなかったけど。
東京での生活が終わった。
何者かになりたかった。ロックスターあるいはライブハウスの店長か。何者かになりたかった。
実家に戻りゆったりとした時間と共に療養し気づいた。
今を生きる、今ここにある人や場所と共に。
それは共に暮らしてきた家族だった。自分には家族がいる。たまたま帰る場所があった。
疲れたら受け入れてくれる親や弟達がいた。
何者にもなれなかったけど、ここには今まで生きてきた自分がある。それだけで十分だったのだ。
地元に暮らす友達もずっと帰りを待っていてくれた。
在るべき所があるから帰ろう。俺には帰る所がある。
さようなら高円寺。さようならビリー。
時が止まっていた17才の俺が大人になる時が来た。